臓器数のカウント方法

当センターの臓器数のカウントは、原則 1臓器、1カウント、1病変、1カウント です。
検査により、カウント臓器ごとに、1つ以上の情報が提供されることが前提となっております。

当センターの臓器カウント方法は、他の病理検査会社と異なることが多いのでご注意ください。


リンパ節は1臓器とカウントします。
<例>

  • リンパ節を含めて乳腺を切除した → 乳腺と付属リンパ節で2カウント
  • 悪性腫瘍を疑い、後肢を寛骨大腿関節より断脚。自己融解を防ぐため、予め膝窩リンパ節を採取し固定。断脚した脚は保冷状態で、膝窩リンパ節は常温のホルマリン固定後、両者の組織検査を依頼 → 腫瘍病変と膝窩リンパ節で2カウント
     ※断脚した脚をそのまま提出した際も、当センターでリンパ節を採取しますので2カウントとなります。
     !ヒント! 腫瘍の際にはリンパ節の検査が重要です。大型サンプルではリンパ節の特定が難しい場合がありますので、予め 取り分けておくことをすすめします。もし組織中に存在するリンパ節の検査が不要であれば、その旨を依頼書にお書きください。

リンパ節は複数の部位から採取しても1カウントとします。
転移の判定やリンパ腫の診断の際、複数のリンパ節を調べることで診断の精度が上がる可能性があるためです。

内視鏡生検組織も臓器数によりカウントします。
<例>

  • 胃、十二指腸、回腸、大腸からサンプルを採取した → 4カウント

1つの臓器に複数のマス/病変が見られた場合は、各々のマス/病変の特定ができるかどうかによって判断します。
<例>

  • 乳腺内に3つのマスが見られ、別々に切除した場合は部位特定が可能な異なる病変として3カウント。乳腺の半および全摘出の場合、マスの数の正確な判別が難しいので1カウント。ただしリンパ節も切除した場合は2カウントになります。
  • 鼠径リンパ節を含めて右乳腺と左乳腺をそれぞれ全切除 → 3カウント。
  • 異なる場所に2つの皮膚腫瘤があり、別々に摘出して提出したときは2カウント。
  • 1つの皮膚サンプルに2つの独立した腫瘤がみられるときも2カウント。
  • 実質臓器(肺、脾臓、肝臓、など)に多数のマスが見られる場合、異なる病変かどうかは肉眼で判別しづらいので1カウント。ただし、胆嚢を含んだ肝臓を提出する場合は2カウントになるので注意してください。

皮膚病では、サンプルの数にかかわらず1カウントです。
皮膚病は、1つの病変と考えるからです。ただし、皮膚病とは関係のない別の病変(例えば腫瘍や皮脂腺の過形成)があった場合は追加のカウントとなります。

左右を区別できる臓器に関しては、原則2カウントとします(例外:卵巣。下記参照)
<例>

  • 左右精巣を摘出し、両方提出した場合は2カウント。左右腎臓を提出した場合も2カウント。
  • 内視鏡で、左右の鼻粘膜を採取し別々に提出した場合も2カウント。

<例外>

  • メスの生殖器の場合、左右同時に提出しても1カウントとします。ただし、卵巣と子宮は異なる器官と考えるため、卵巣と子宮を両方提出したときは2カウントとなりますのでご注意ください。卵巣の組織検査に興味がなく、取り除くのが面倒な場合は、センターへのメッセージ欄に「卵巣組織検査不要」と書けば子宮のみの組織検査となり、カウントは1となります。
  • 甲状腺と上皮上体は分けることが難しいため、同時に提出しても1カウントとします。

臓器カウント方法で迷われた場合は、遠慮なくセンター(093-982-6639)までお問い合わせください。

***********************************
<範例>
5歳ネコ。口腔内に潰瘍を伴った病変を口蓋と舌に認める。口蓋と舌の両方から生検材料を採取した。 → 2箇所の病変のプロセスは同じだと思われるので、1カウント。

7歳ロットワイラー。口腔内 右上顎犬歯と下顎切歯部分に2つのマスを認める。両方を切除して提出した。 → 2つの異なるマスなので2カウント。

7歳ボクサー。左前肢に2つのマスを認める。両方のマスのFNAで肥満細胞腫と診断された。両マスを切除し提出した。 → 肥満細胞腫と同じタイプの腫瘍ながら、別々の独立したマスなので2カウント。
***********************************

どうして動病診では組織のカウント方法が違うのか
当センターでは、検査した臓器の数によって病理専門医に報酬が支払われる仕組みとなっております。
病理専門医は、複数の標本を観察する際、臓器が変わる度に、全く新しい部位として頭の中を一度リセットして所見を取りなおします。
さらに、その複数の異なる組織が相関しているかどうかを、改めて総合的に判断します。
このように、臓器の数が増える毎に、検査時間も長くなりますので、当センターでは臓器数による課金方法を取らせていただいております。

検査により、カウントされた臓器数と同じ数かそれ以上の情報が臨床現場に提供されることをお約束します。